大切な愛車を守るために何をしていますか?
警察の啓発活動や防犯カメラなどの普及、「盗難防止装置:イモビライザー」の装着により、ひところに比べると自動車盗難は大幅に減少しているとはいえ、いまだに1日約30台の車が日常的に盗難に遭っています。
盗難されるクルマは、「鍵を開けて駐車していた!」「エンジンを付けて車両から離れた!」という誰でも出来そうな乗り逃げ的な窃盗だけではありません。驚くべきことは、盗難時に手元に鍵は持っていて、「しっかりとドアのロックもしていた!」「エンジンも止めていた!」・・にもかかわらず、エンジンの掛かるはずが無いクルマが駐車場から忽然と消えてしまった!という盗難「キーなし盗難」があります。
犯罪なんてニュースの中のことだと思っている人も多いかもしれませんが、実は窃盗の被害は決して縁遠いものではありません。
警察庁による自動車盗難件数(認知件数)を見ると、2008年の27668件から2017年の10213件まで、この10年間で1/3近くにまで減っていますが、いくら減ったとしても、たった一台のそのクルマが貴方のクルマだったら・・・!
盗難に遭わないようにするにはどうしたら?
まず自分自身で出来る一番の自己防衛として、キーを付けたままで車から離れない事です。当たり前と言われればそれまでですが、いまだに自動車盗難件数の4分の1は「キーあり」盗難です。夏場などエアコンを利用している場合は特に多くみられますが、コンビニやスーパーの駐車場・マンション入り口など、エンジンをかけたままで車から離れるドライバーが後を絶ちません。日本損害保険協会が2021年3月に発表した「第22回自動車盗難事故実態調査結果」によると最も盗難が発生しやすいのは自宅の屋外駐車場でした。もちろん物理的に鍵を盗まれてしまったということもありますが、スペアキーをバンパーの裏や車体下に貼り付けるなど、ありがちな方法は絶対NGです。なお、車両保険に入っていても鍵がついていたり、ドアロックをしていなかったりユーザー側に少しでも過失があると保険金が支払われない場合もあるので要注意です。
自分自身の意識を高めることはもちろんですが、現状は盗難被害に遭った自動車の4台のうち約3台がキーを抜きドアロックをしたにもかかわらず盗難被害に遭っています。これらについてはどのように対処すれば良いのでしょうか・・・?盗難手口についての理解を深める事により、対処方法は自ずと見えてきます。いつの時代も窃盗犯が狙うのは、時間が掛かるものより、少しでも時間が掛からずその場を立ち去れるものです!窃盗犯が少しでも嫌がる対策を行っておきましょう。
現在車両側で行われている盗難対策
まずは現在車両側で行われている盗難対策についても説明しておきます。日本国内に限らず各自動車メーカーにおいて、少しでも車が盗難されにくくするにはどうすれば良いのか日々技術革新を行っています。もちろん、高級車だけに限らず乗用車・軽自動車からバイク、建設用機材などにも対策は進んでいます。現在多くのメーカーで取り入れている対策は、「セキュリティアラーム(盗難警報装置)の搭載」と「イモビライザー(盗難防止装置)の搭載」の大きく分けて2種類あります。
セキュリティアラーム(盗難警報装置)
キーレスキー(スマートキーやリモコンキー)で施錠をすると、自動的に警報装置が警戒モードとしてセットされます。この警戒モード中に鍵穴に鍵を差し込んで開錠してしまうと、数秒後にハザードが点滅をはじめ、クラクションが鳴り始めます。ただし、スマートキーの中に収納されている正式なエマージェンシーキーで開錠してもセキュリティアラームは反応してしまいます。デパートやスーパーの駐車場とかで遭遇したことがあるかもしれませんが、こちらはエンジン始動を制御しているわけではなく、車に視線(注目)を集めるだけの警告となります。
イモビライザー(盗難防止装置)
あらかじめ車内の電子コンピューターに、この車を動かすためにはどの鍵を利用すれば良いかという情報が登録されていると考えて下さい。そして利用する鍵の方には、登録データーから作られた専用のチップを入れてあります。いざエンジンを掛けようとした時に、鍵のチップ情報を車の電子コンピューターが読み取るのですが、データーが一致しない場合は、エンジン始動することが出来ません。見た目が全く同じキーレスキー(スマートキーやリモコンキー)を持っていても別の車種でエンジン始動しないようになっております。ただし、こちらはエンジン始動を制御しているだけで、ドアの施錠・開錠については制御出来ておりません。
手口を見極めて対処を考える!
イモビライザー(盗難防止装置)が普及し車両の盗難件数が減少傾向になっているのは事実です。しかし残念ながら窃盗団の技術や発想はそれ以上にずる賢く向上しています。ここでは、最新の車両盗難手口や対策について解説していきます。現在「キーなし」盗難のうち、窃盗団でよくみられる手口は、「イモビカッター」と「リレーアタック」と「コードグラバー」の大きく分けて3種類あります。
イモビカッターとは・・
登録されているキーレスキー(スマートキーやリモコンキー)で無いとエンジンが掛けれないのであれば、登録してあるデーターを消去して、新たに手元に準備した鍵を登録し直せば良いという考え方です。本来は自動車販売店や整備工場、そして私達鍵の専門業者のために作られたもので、一般の方が手にすることは出来ません。しかしながら数年前に一般の方でも手に出来る環境として販売があったため、社会問題に発展しました。2006年以降にフルモデルチェンジした車種はイモビカッター対策が進んでおり、イモビカッターによる盗難被害が話題になった当初のイモビカッターではイモビライザーの解除が出来なくなっています。しかしながら、5年、10年など年数が経過した車種の場合、対策が古くなり盗難の被害に遭う可能性があります。
リレーアタックとは・・
スマートキーは、ポケットや鞄など身近なところにキーを身に付けていれば、自動車のドアノブに手を近づけるだけでロックが解除され、車内に入ってエンジンボタンを押すことでエンジンがかかるシステムです。ではどの程度離れていても車両本体は鍵をもっていると反応してくれるのでしょうか?スマートキーからは常時微弱な電波が出ていますので、その電波をまるでリレーのように中継・中継と飛ばすことができたら、かなり離れた場所でも鍵を持っていると車両が勘違いするのでは?という考え方です。
「リレーアタック」は電波を中継していくため、玄関などにスマートキーをぶら下げておくと、外から簡単にキーの電波を傍受できてしまい、盗難に遭うリスクが増加します。対策としては、スマートキーから常に電波が発されているため、その電波を抑え込む必要があります。自宅で管理する時はフタがついた金属製の缶にスマートキーを入れて保管したり、電波を遮断できるスマートキーケースが販売されているので、それらを使用するのが最も手っ取り早い方法となります。「電波遮断」や「リレーアタック防止」などと記載されている商品を選ぶとよいでしょう。他にも、スマートキー自体に「節電モード」が搭載されているケースもあります。車種によって操作方法は異なりますが、スマートキーの施錠ボタンを押しながら解錠ボタンを2回押す・・のような感じで節電モードにすることができます。なお、節電モードを解除するにはなにかボタンを押すだけです。注意点として、節電モードではスマートキーとしての役割を果たさなくなるので、運転する時は通常モード、駐車時や自宅にいる間などは節電モードと切り替えて使用する手間が増えてしまいます。
コードグラバーとは・・
リレーアタックと同じく車の電波を使いますが、大きな違いとしては、リレータックはスマートキーの微弱電波の受信側、送信側の電波を利用する必要があるのに対し、コードグラバーはスマートキーの受信側の電波のみでキーを複製出来ます。窃盗団の考えも飛躍し、鍵自体を作れば良いというところまで行っています。コードグラバーは、受信側の電波のみが必要なので、元になるスマートキーすら必要ないため驚きです。コードグラバーという名称の由来もCode(コード)=信号 grabbing(グラビング)=掴む、から来ていますが、車から発せられている電波(信号)を掴んで、その情報をもとに、コピーした鍵を作り、そして当たり前に鍵を開錠しエンジンを掛けてしまいます。
犯行に電波が必要な「リレーアタック」や「コードグラバー」ですが、大きな違いとして、「コードグラバー」ではスマートキー側の対策が全く役に立ちません。
新しい手口は次から次へと・・・
リレーアタックやコードグラバーは、盗難する車両のスマートキーが発する電波を利用していましたが、ここ最近新たな手口として、スマートキーの電波を利用せず、自動車のシステムに直接侵入しデータを抜き取る「CANインベーダー」という手口が確認されました。
新たな手口CANインベーダーとは・・
車にはメーカー関わらず、ほぼすべての車両に「OBDⅡ(オービーディーツー)」というシステムが搭載されています。OBDⅡとは、自動車の情報が集約されるターミナルのような機能で、故障した際にどこに不具合があるのかを自己診断してくれるシステムです。近年の自動車はもはやコンピューターといえるほど複雑なのでこういったシステム管理が必要となります。OBD専用コネクターの車両装着位置は、ほぼ統一されており、運転席の足元にあることがほとんどで、整備工場やディーラーなどが自動車を修理する際はここに診断機を接続することで異常の内容を読み取ることができます。そしてCANインベーダーは、このOBDⅡへと不正にアクセスし、盗難する車両を解錠、運転できる状態にします。そして最も恐ろしいのは、この信号は専用の機器さえあれば車外からもアクセス可能です。
犯行にスマートキーの電波が必要ない「コードグラバー」や「CANインベーダー」を防ぐのは手口の解明が進むまでは簡単な対策は困難かもしれません。全てに共通しますが、逆にアナログの方法として、ハンドルロックやタイヤロックなど、車両本体の機能ではなく、物理的なセキュリティ対策が一番有効になってきます。